家族信託活用事例C-5:内縁の妻の生活を保障したいケース

X(70)は、籍を入れていない内縁の妻A(60)と二人で暮らしています。Xには、子供がいません(兄弟はいます)。Xは、自分が死んだら、長年連れ添ったAには何不自由させたくないので、遺産はすべて相続人でないAに譲りたいのです。

しかし、Aには相続人がいません(子はおらず、両親も他界の1人っ子)ので、次にAが死亡した際に残った自宅不動産を含めた財産は、Xが生まれ育った町に寄付して、そこの高齢者福祉事業に役立ててほしいと考えています。

信託活用事例5:内縁の妻の生活を保障したいケース

解決策

Xは、遺言において、信託を設定します。その内容は、自分の死後、受託者を信頼できる司法書士Zにして財産を託し、その受益者を内縁の妻Aにします。
Aの死亡により信託が終了するように定め、信託の残余財産の帰属先を「○○県××市の高齢者福祉事業」に指定します。なお、もし市役所側が不動産自体での寄付を受け付ない場合に備え、遺言書の記載内容を工夫する必要があるかもしれません。

ポイント

遺言がない場合、内縁の妻には一切の相続権がありませんので、Xの兄弟に遺産がいってしまうことになります。
そこで、全ての財産をAに遺贈する旨の遺言書を書くことでAの生活保障は実現できるでしょう(兄弟に遺留分はないので、Aが遺産全額をほぼ確定的に受贈できるでしょう)
しかし、Aには相続人がいませんので、Aが遺言を書いておかなければ、Aの死後は相続人不存在として、Aの遺産は国庫に帰属してしまいます。
このようなケースで、信託スキームを使うことで、Xの希望を反映させた財産承継の道筋を作ることができます。
なお、国または地方公共団体等への寄付については、受ける側の承認手続きが必要となりますので、金銭以外の財産の寄付を拒否される場合に備えて、遺言内容の工夫が必要でしょう。

家族信託の活用事例

A.生前の財産管理

B.不動産の共有トラブルを回避

C.資産承継における“想い”を実現

D.争族トラブル防止

E.事業承継

F.福祉型信託