X(70)は、籍を入れていない内縁の妻A(60)と二人で暮らしています。Xには、子供がいません(兄弟はいます)。Xは、自分が死んだら、長年連れ添ったAには何不自由させたくないので、遺産はすべて相続人でないAに譲りたいのです。
しかし、Aには相続人がいません(子はおらず、両親も他界の1人っ子)ので、次にAが死亡した際に残った自宅不動産を含めた財産は、Xが生まれ育った町に寄付して、そこの高齢者福祉事業に役立ててほしいと考えています。
解決策
Xは、遺言において、信託を設定します。その内容は、自分の死後、受託者を信頼できる司法書士Zにして財産を託し、その受益者を内縁の妻Aにします。
Aの死亡により信託が終了するように定め、信託の残余財産の帰属先を「○○県××市の高齢者福祉事業」に指定します。なお、もし市役所側が不動産自体での寄付を受け付ない場合に備え、遺言書の記載内容を工夫する必要があるかもしれません。
ポイント
遺言がない場合、内縁の妻には一切の相続権がありませんので、Xの兄弟に遺産がいってしまうことになります。
そこで、全ての財産をAに遺贈する旨の遺言書を書くことでAの生活保障は実現できるでしょう(兄弟に遺留分はないので、Aが遺産全額をほぼ確定的に受贈できるでしょう)
しかし、Aには相続人がいませんので、Aが遺言を書いておかなければ、Aの死後は相続人不存在として、Aの遺産は国庫に帰属してしまいます。
このようなケースで、信託スキームを使うことで、Xの希望を反映させた財産承継の道筋を作ることができます。
なお、国または地方公共団体等への寄付については、受ける側の承認手続きが必要となりますので、金銭以外の財産の寄付を拒否される場合に備えて、遺言内容の工夫が必要でしょう。
家族信託の活用事例
A.生前の財産管理
B.不動産の共有トラブルを回避
C.資産承継における“想い”を実現
- 【家族信託活用事例C-1】子のいない地主夫婦が家産の一族承継を死守したいケース
- 【家族信託活用事例C-2】子のいない資産家夫婦が死亡の順番に関係なく自分の親族に財産を遺したいケース
- 【家族信託活用事例C-3】後妻には子がいないが前妻には子がいるケース
- 【家族信託活用事例C-4】前妻と後妻がいるがどちらにも子がいないケース
- 【家族信託活用事例C-5】内縁の妻の生活を保障したいケース
- 【家族信託活用事例C-6】老親の死後に実家を売却して分配したいケース ≪清算型遺贈代用信託≫
- 【信託活用事例C-7】老夫婦の認知症対策と妻亡き後の承継先も指定したいケース (配偶者居住権の活用との比較や遺留分対策の観点も踏まえて・・・)
D.争族トラブル防止
E.事業承継
F.福祉型信託